1歳になる雌の水辺猫を病院に連れていった。
2〜3日前から食餌を摂らなくなり、日向で眠るばかりだということ。
捨てられた自転車のカゴで寝ていた猫を抱き上げてみると、骨と皮。ぎょっとするほど軽い。
「病院に行こうか」
そういって再度抱き上げようとすると、左前足の爪で寝ていたカゴの網目をひっかける。
「ここがいい」
そう言われた気がした。
「ここに帰ってくるから、とにかく行こう」
そういって、爪を押さえ、ペットキャリーに。
中では諦めたように大人しい。
「熱が40度ちょっと、風邪だと思います。抗生物質を打ちましょう」
獣医師の言葉に安堵しながら、私は気になっていたことを話していないのに気づいた。
「連れてくるとき、咳をしたんです。こんなふうに、えづくような...」
「ちょっとまって、そんな咳?レントゲン撮っていい?」
待合室で待つこと30分。再度診察室に呼ばれた。
「レントゲンを見てください、心臓のあたり。周囲が黒くなっているでしょう?肺炎です」
1歳なのにわずか1.4kgしかない体は、もともと虚弱だったらしく、普通なら問題にならないような風邪が肺炎へと進んでいた。
「抗生物質と栄養剤を打ちました。肺に水はほとんど溜まっていませんが、小さい部分ながら、かなりの炎症のようです。後は熱が下がって食欲が出れば、体力次第で治ることも...」
「外に戻していいものでしょうか?」
「虚弱な原因が現在現れていない病気である可能性もあります。子猫がいる家で一緒にはしない方がいいです」
病院で貰った領収書に書いてあった名前は「◯ちゃん」。私が名前を書かなかったせいだ。
「よし、お前はマルちゃんだ。さ、帰るよ」
もといた場所に戻ると、マルちゃんは自転車のカゴに戻り、丸くなって眠りはじめた。
「もう独りにして」
そう言われた気がした。
今日は暖かい、ゆっくり休んで、明日はボランティアさんからご飯を貰うんだよ。
来週、また会おうね。きっとだよ?
せつない出来事ですね。まるちゃんの与えられた寿命がある限りよわよわしいまま生きつづけるのでしょうね。病院へ連れて行ってくださり、感謝します。できる限りのことをしてあげたのですから、そのこの生命力にゆだねましょう。