サビがいたのは、旧街道に狭い生活道路が交差する十字路。
いつも車の行き交う街道を向いて、うずくまっていた。
「うちの子ではないんだけど」
そういいながら、近所のヒトがいじめられないようにと首輪をしてくれていた。
見かけは幸せな飼い猫のよう。
なのに時おり、はっとするような孤独感をにじませていた。
「この子は母猫と一緒にここへやっていたんだけど、すぐに母猫が通りで車に轢かれてね」
それ以来、サビは街道の見える場所で一日の大半を過ごすようになったという。
愛想のない猫だった。
通りかかって、声をかけても、耳の後ろを掻いてやっても、どこか上の空。
じっと街道の方を向いていた。
ある日を境に、サビの姿をみかけなくなった。
前に彼女の来歴を話してくれた婦人に声をかけてみた。
「あの子ね、通りの向こうへ行っちゃったみたい。見ているだけで近寄らなかったのに、渡って行っちゃった」
サビのいない十字路は、前より少し寒くなったようだ。
サビはどこへ行きたかったんだろう。
道を渡って、どこへ行ったんだろう。
カテゴリだけは以前から設定していたのですが、どう作ろうかと考えた揚げ句、テキスト中心でいいのではないかと。
だったら悩むことなかったね。
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