水辺には、血のつながった猫が集団で暮らしている場所がいくつかある。そんな場所でのこと。
秋生まれの子猫が一匹、じっとうずくまっていた。
人馴れしているわけではないので、普通なら近づけば逃げるはずなのだが、逃げない。
どうやら目ヤニが固まってしまい、まぶたが開かなくなっているようだ。
抱き上げて拭き取ると、まぶたの周りに小さなカサブタもできている。
瞬膜が赤いので、点眼薬を少し垂らす。
目が開いた後は、にわかに鳴き声を上げるようになり、抱き上げている手に爪を立てて抵抗する。
薬が染みるから余計に暴れる。
と、気がつけば、子猫の兄弟や母猫、そのほかで8匹ほどが隠れ場から出てきて、私を囲むようにして見上げていた。
子猫の鳴き声を聞いて心配したのだろうか。
一応の手当が済み、子猫を地面に下ろしてやると、母猫のもとへそそくさと逃げていく。
その様子を見て、私を囲んでいた猫たちも散っていった。
以前にも子猫を手当てしたとき、母猫が心配そうに周りをうろついたことはあったが、こんなに多くの猫に囲まれたのは初めて。血族の結びつきを見たような気がした。
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