残念なことに、春になると動物への虐待が増える傾向にある。
ここのところ、あちこちで猫を傷つけたり、殺害したりする被害の話を聞くようになってしまった。
新年度は、自分の思い通りにならなかったことの腹いせに生き物を害する者が増える。
たぶん、おおかたの人が思うよりも、こうした虐待の発生数ははるかに多いはずだ。
ヒゲをライターで燃やしたり、ハサミで切ったり。
薬品を浴びせかけたり、刃物で切りつけたり、蹴ったり、殴ったり。
挙げ句の果てには命を奪ったり。
言うまでもないことだけれど、これらは動物愛護管理法によって罰則が定められている犯罪だ。
もちろん、飼い主のいない猫にも適用される。
もし、こうした虐待を目撃した場合は通報の義務があることを忘れないでほしい。
小さな生き物への虐待を見逃せば、次は人間の弱者への暴力となっていくことも考えられる。
このところ、何年も前に出会ったお婆さんのことを思い出す。
いつも喪服のように黒い服装で、猫が嫌いな人はもちろん、猫好きだという人も信用していなかった。
たまたま、彼女が世話をしていた三毛猫が私に懐いていたため、「ミーちゃんが好きだって言うから」と、私とは言葉を交わしてくれていた。
彼女は猫にご飯をあげながら、よく歌うようにつぶやいていた。
「自分の身に起こった不幸や、実らなかった希望。
そんなもの、この子たちに何の責任があるっていうんだ。
小さい者を踏みつける奴は、めぐりめぐって、もっと大きな足に蹴りつけられる。
いつもおんなじことの繰り返し。
どうして誰もが弱い者に厳しくするんだろう。
どうして誰も優しくないんだろう。」
あのお婆さんとはもう何年も会っていないけれど、
生き物を取り巻く現状は、いまもなんにも変わっていないように思える。
残念な春だ。
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