あのとき、自分は何をしていたか…
打合せから帰る途中だった。
最初に気づいたのは、高架や信号などの支柱が軋む音。
不自然な街路樹の葉擦れの音。
つづく大きな揺れ。
叫び、何かの割れる音、クラクション、警告音、とにかく色んな音がしていた。
借り物の自転車に乗っていた私は、左手を揺れる街路樹について、そのまま長い揺れの間を自転車にまたがったままで過ごした。
目の前の舗道では、3畳ほどの面積のタイルがゆらゆらと浮き上がり、沈み込んだと思うと隙間からゆるい砂を吹き上げる。
私のつかまっている街路樹も大きく揺れ、根元にはお婆さんがしゃがみ込んでいた。
通りの向こうから、お婆さんの身内らしい女性が「木は倒れるから離れて!」と叫んでいた。
「歩けない、どうしよう」とお婆さん。
「これだけ根を張っている木は倒れませんよ。危なくなったら向こうまで連れていきますから、そこにいて」と私。
結局木は倒れず、最初の揺れが収まった後、お婆さんは通りを渡っていった。
オフィスに電話したけれど繋がらず、私は液状化した舗道を避けながら自転車を漕ぎはじめた。
2011年3月11日に撮影した写真
千葉県千葉市で地震に遭遇した私は、都内に帰るため、ギア付きの自転車を買って夕方から夜半まで漕ぎ続けた。
被災状況を撮影している人もたくさん見かけたけれど、自分は壊れた街の姿を絶対に撮るまい、と思った。
2011年3月11日 14時46分以前に撮影した写真
14時30分頃、直前に撮影した写真
2011年3月11日 14時46分以後に撮影した写真
騒ぎにくたびれたのか、道端で寝てしまった子
表に出て様子をうかがう猫たち
暗い通りに潜んでいた子
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