写真、とくにデジタルデータは基本複製がなんぼでもできる媒体です。
銀塩写真(フィルム)の場合は印画紙への現像や定着といった、わかりやすい手仕事があるけれども、デジタルデータの場合、プリントは最終の出力まで端末内でできてしまうため、イマイチ手仕事という感じがしません。
いや、不器用な私には、このデジタル作業なしではデザインワークも何もあったもんじゃないんだけど、それでも手仕事という物づくりの基本への憧れは私のような者にも強くあるのです。
そんでもって、昨年ちょっと初めてみたのが「クリプトプリント」。
聞いたことがない?
そりゃそうです。私が勝手に作った言葉ですから。
これは国産間伐スギ材に写真画像を転写したもので、スギの学名「クリプトメニア」をもじって、クリプトプリントと名づけました。
反転出力した写真を水で濡らしたスギ板に版画のように擦って転写するもので、写真にスギの木目が重なって古い写真のような感じになります。
とくに明るい部分ははっきりと木目がでます。
転写も水の沁み具合やスギ板の凹凸、バレンの力加減などで一様にはいかないため、デジタルデータが基になっているのに結果は一期一会の1点モノになります。
まあ、失敗も多く、作品化できるのは30%程度という有様ですが…。
実際の作例がこれです。昨年ギャラリーに出したなかで、いま手元に残っているのはこの1点だけ。あとは気に入って頂いた方がお求めくださいました。
最近のプリント技術の向上に逆行して、解像度も精度も低いのですが、それでも手仕事をしたという満足感はありました。
花粉症のイメージもあるスギですが、実は日本固有種の植物でもあるので、日本の猫たちの住む風土や、その空気感を託すのもいいかなと思っています。
素材となるスギ板の安定した購入先を見つけていないので、日比谷公園の「みどりの感謝祭」などのイベントでまた探してみようかと思っています。(試行錯誤が多いので、これ用に板を引いて貰うとコスト的に…)
いまここ
それで、今後なのですが、このクリプトプリント以外にも、例えばプリント出力後の画像を素材として、なにか手仕事を加えて作品化する方法はないかなと考えているところです。
いま、ちょっと撮影段階から用意すればできるんじゃね?と考えついたものがあるので、早ければ来年2月に開催予定の企画写真展でお目にかけることができるかもしれません。
いや、まだ、お約束はしませんよ?
でも、何か新しい変なことを思いついて、やってみようとするのは楽しいことです。
ピース。
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